拙稿“Hospitality or Property?: The Natural Right of Communication and the ‘New World’”所収の英語著作The Transatlantic Las Casas: Historical Trajectories, Indigenous Cultures, Scholastic Thought, and Reception in Historyが、人文社会科学の学術出版で定評あるブリル社(Brill)から刊行されました(ISBN: 978-90-04-42514-9)。
本書は、2019年夏にアメリカ・プロビデンス大学で開催された第2回ラス・カサス国際会議における口頭報告と議論を敷衍したものです。アジア、ヨーロッパ、南北アメリカのイベリア研究者たちが集い、「インディオの擁護者」バルトロメ・デ・ラス・カサスを多角的に分析しています。この学術交流は、2023年夏の正式な発足に向けて準備が進められているラス・カサス協会へとつながっています。
本書第12章にあたる拙稿は、自然的交通権-他者に害を与えない限り、自由に通行、交易、移住しうる権利-に着目し、初期近代スペイン思想の位置と意義を明らかにするものです。具体的には、ビトリアに始まり、グロティウス、プーフェンドルフを経てカントに至る、他者の歓待と自己所有権の緊張関係を検証し、ラス・カサスが自然的交通権に疑問を呈する先駆的な議論を提供した点で重要だと位置づけました。
本論文は、科研費国際共同研究強化(A)、トヨタ財団研究助成、江頭ホスピタリティ事業振興財団研究開発助成、国際文化交流事業財団人物交流派遣助成による研究成果の一部です。ご関係のみなさまに、あらためて心より御礼申し上げます。
◎本論文のもとになった口頭報告
・“Hospitality or Property?: The Natural Right of Communication and the ‘New World,’” II International Conference on Bartolomé de Las Casas, Providence College, Providence, 2019.
・“Bartolomé de Las Casas in the Traditional Discourses on Communication and Hospitality: Critical Arguments before the Modern Natural Law Theorists,” Workshop on “The Global Face of the School of Salamanca,” Max Planck Institute for European Legal History, Frankfurt, 2019.
・“¿Hospitalidad o soberanía?: Vitoria y Las Casas en las Relaciones Internacionales contemporáneas,” Reunión de los profesores, Instituto Universitario de Estudios Europeos de la Universidad CEU San Pablo, Madrid, 2019.
この掲載については静岡県立大学のホームページでも紹介いただきました。(松森奈津子准教授の英語共著著作『The Transatlantic Las Casas』が刊行 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学)