拙稿が国際学術誌『Estudios Filosóficos』の「サラマンカ学派」特集号に掲載されました

拙稿“Universalist Conceptions of Global Order: Reconsidering Carl Schmitt’s Criticisms of Francisco de Vitoria”が査読付国際学術誌『Estudios Filosóficos』の「サラマンカ学派」特集号に掲載されました(Vol. 74, Núm. 214, ISSN: 0210-6086)。

『Estudios Filosóficos』は、ローマ教皇庁が設立し、ドミニコ会スペイン管区が運営するバリャドリード高等哲学研究所(スペイン)の機関誌です。同研究所は、バリャドリード大学をはじめ、サラマンカ学派の拠点となったサン・エステバン修道院、教皇庁立サラマンカ・ポンティフィシア大学等と連携し、世界のカトリック研究をけん引してきました。本号は、初期近代のカトリシズムを主導した「サラマンカ学派」の特集号であり、私が設立メンバーとしてかかわってきた国際ラス・カサス協会を中心とする研究者たちが、様々な観点から同学派の意義を検討しています。

また本拙稿は、2020年に日本政治学会から国際交流事業の一環として韓国政治学会に派遣され、招待報告を行った内容を敷衍したもので、私が代表を務める科研費基盤研究(B)、挑戦的研究(萌芽)による国際共同研究の成果論文です。現代ドイツの法学者カール・シュミットの厳しい批判にもかかわらず、サラマンカ学派創始者フランシスコ・デ・ビトリアが示した普遍的な世界秩序観は、今なお妥当性をもつことを主張しました。その際、グローバル化が進んだ現代社会では、戦争と無秩序を特定の地域から追い出し、平和と安全を享受しうる場所を作ることはできないため、シュミットが普遍主義的構想の代替案として示している場所画定論は、現実的ではない旨を指摘しました。

◎『Estudios Filosóficos』の詳細情報(外部リンク:Instituto Superior de Filosofía de Valladolid de la Orden de Predicadores)
https://estudiosfilosoficos.dominicos.org/ojs/issue/view/221

この掲載については静岡県立大学のホームページでも紹介いただきました。(松森奈津子教授の科研費国際共同研究成果が国際学術誌特集号に掲載)

共著『スペイン・ポルトガル史研究入門』が刊行されました

共著『スペイン・ポルトガル史研究入門』が山川出版社から刊行されました(ISBN978-4-634-64111-2)。

本書は、スペイン・ポルトガルの歴史を学ぶ大学生、大学院生をはじめ、研究者にも役に立つ、各時代・テーマの主な論点を解説した入門書です。参考文献やオンライン情報などの基本データも充実しており、世界史の教科書で学んだ知識をさらに深めたい高校生のみなさんにも適しています。

 執筆を担当した章は、テーマ編「スペイン・ポルトガル帝国と海外世界」の「帝国支配の思想」で、レコンキスタから啓蒙主義に至るスペインの対外進出を支えた諸思想(正戦論や自然奴隷説など)について記述しています。

◎『スペイン・ポルトガル史研究入門』の詳細情報(外部リンク:山川出版社)https://www.yamakawa.co.jp/product/64111


◎スペイン・ポルトガル史や帝国思想の知識をさらに深めたい方に。
これまで執筆に加わった以下の事典、概説書,講座も参考になるかと思います。

【事典】
・セルバンテス文化研究センター監修『スペイン文化事典』丸善出版、2011年(担当項目:セネカ、トレド翻訳学派、ラス・カサス)。
・社会思想史学会編『社会思想史事典』丸善出版 、2019年 (担当項目:大航海時代、対抗宗教改革、文明と野蛮)。
・関雄二ほか編『ラテンアメリカ文化事典』丸善出版、2021年(担当項目:インディアス問題)。

【概説書】
・津田由美子、吉武信彦編『北欧・南欧・ベネルクス』ミネルヴァ書房、 2011年 (担当章:スペイン―自治州国家と重層的アイデンティティ)。
・坂東省次編『現代スペインを知るための60章』明石書店、2013年(担当章:民主化を進めた首相たち―スアレスからサパテロまで、ラホイ首相の手腕はいかに、自治州国家―政治の二重構造、EUのなかのスペイン―ヨーロッパ主義の優等生)。
・野口雅弘ほか編『よくわかる 政治思想』ミネルヴァ書房 、2021年 (担当章:サラマンカ学派)。

【講座】
・川出良枝編著『岩波講座政治哲学1 主権と自由』岩波書店、2014年(担当章:サラマンカ学派―「野蛮人」と政治権力)。

共著 『The Transatlantic Las Casas』が刊行されました

拙稿“Hospitality or Property?: The Natural Right of Communication and the ‘New World’”所収の英語著作The Transatlantic Las Casas: Historical Trajectories, Indigenous Cultures, Scholastic Thought, and Reception in Historyが、人文社会科学の学術出版で定評あるブリル社(Brill)から刊行されました(ISBN: 978-90-04-42514-9)。

本書は、2019年夏にアメリカ・プロビデンス大学で開催された第2回ラス・カサス国際会議における口頭報告と議論を敷衍したものです。アジア、ヨーロッパ、南北アメリカのイベリア研究者たちが集い、「インディオの擁護者」バルトロメ・デ・ラス・カサスを多角的に分析しています。この学術交流は、2023年夏の正式な発足に向けて準備が進められているラス・カサス協会へとつながっています。

the cover image of the transatlantic Las Casas
◎本書の詳細情報(出版社ブリル)
https://brill.com/display/title/57046(外部サイトへリンク)

本書第12章にあたる拙稿は、自然的交通権-他者に害を与えない限り、自由に通行、交易、移住しうる権利-に着目し、初期近代スペイン思想の位置と意義を明らかにするものです。具体的には、ビトリアに始まり、グロティウス、プーフェンドルフを経てカントに至る、他者の歓待と自己所有権の緊張関係を検証し、ラス・カサスが自然的交通権に疑問を呈する先駆的な議論を提供した点で重要だと位置づけました。

 

本論文は、科研費国際共同研究強化(A)、トヨタ財団研究助成、江頭ホスピタリティ事業振興財団研究開発助成、国際文化交流事業財団人物交流派遣助成による研究成果の一部です。ご関係のみなさまに、あらためて心より御礼申し上げます。

◎本論文のもとになった口頭報告
・“Hospitality or Property?: The Natural Right of Communication and the ‘New World,’” II International Conference on Bartolomé de Las Casas, Providence College, Providence, 2019.

・“Bartolomé de Las Casas in the Traditional Discourses on Communication and Hospitality: Critical Arguments before the Modern Natural Law Theorists,” Workshop on “The Global Face of the School of Salamanca,” Max Planck Institute for European Legal History, Frankfurt, 2019.

・“¿Hospitalidad o soberanía?: Vitoria y Las Casas en las Relaciones Internacionales contemporáneas,” Reunión de los profesores, Instituto Universitario de Estudios Europeos de la Universidad CEU San Pablo, Madrid, 2019.

この掲載については静岡県立大学のホームページでも紹介いただきました。(松森奈津子准教授の英語共著著作『The Transatlantic Las Casas』が刊行 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学)

『アステイオン』第96号に拙論が掲載されました

拙論「異人歓待と羽衣伝説―ホスピタリティの系譜学における日本」を『アステイオン』第96号(ISSN 4484222103)に掲載していただきました。

『アステイオン』は、サントリー文化財団が編集を行い、CCCメディアハウスから出版している「アカデミズムとジャーナリズムをつなぐ『鋭く感じ、柔らかく考える』論壇誌」です。

本拙論は、近年各国で台頭している、マイノリティ、移民、外国人に対する排外主義に着目し、「われわれ」と「かれら」をめぐる諸問題を古来の「ホスピタリティ(歓待)」と「プロパティ(所有権)」の緊張関係から再考したものです。その際、三保松原と富士山を二大拠点とする本県の羽衣伝説を、洋の東西の区別を超えたホスピタリティの系譜学に位置づけ、国内(京都府、滋賀県、沖縄県)、国外(北方圏、南方圏、中央圏)双方の天女、白鳥伝説と比較検討しました。最後に、難民や亡命者とより豊かになるための移民を同じように受け入れるべきか、また受け入れ後、国民と同程度の市民的義務を果たせない人々に対してどこまで権利を付与するのかといった問題に対処するには、普遍的な概念を政策レベルで再構築するという地道で困難な作業が必要になる点を論じました。

この掲載については静岡県立大学のホームページでも紹介いただきました。(松森奈津子准教授が論壇誌『アステイオン』において本県の羽衣伝説を日本、世界の異人論と比較考察 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学)


これまでの『アステイオン』拙論掲載号

学長表彰をいただきました

2020年度の教員活動評価における業績優秀者として2021年度学長表彰をいただきました。

静岡県立大学の教員活動評価とは,教員の教育研究活動等の一層の向上を図ることを目的として、2011年度(平成23年度)から毎年度実施されているものです。「教育活動」、「研究活動」、「社会貢献等の活動」、「大学運営等への寄与」の4領域において領域別評価を行い、さらにその結果を踏まえ総合評価がなされます。

学長表彰をいただきました

The School of Salamanca in the Affairs of the Indies のペーパーバック版が出版されました

The School of Salamanca in the Affairs of the Indies: Barbarism and Political Orderのペーパーバック版が、ロンドンのラウトレッジ(Routledge)から刊行されました(ISBN 9781032094724)。本書は、2019年にハードカバー版、ついでKindle版として公刊され、好評を得たことから、このたびペーパーバック版の出版に至りました。

本書は、16,17世紀のスペインで興隆したサラマンカ学派の政治思想の特質と意義を明らかにするものです。前期サラマンカ学派(ビトリア、ソト)、後期サラマンカ学派(モリナ、スアレス)、周辺の思想家(ラス・カサス、セプルベダ、リバデネイラ、マリアナ)を、同時代の思想家(マキァヴェッリ、ボダン、グロティウス、ホッブズ)と比較しながら考察しています。「内なる野蛮」(暴政)を抑え、「外部の野蛮」(非ヨーロッパ社会)をも含む世界秩序を構想したその思想は、国際法、人民主権論、立憲主義、資本主義などの先駆として、後世に大きな影響を与えています。

◎本書の詳細情報(出版社ラウトレッジ)
https://www.routledge.com/The-School-of-Salamanca-in-the-Affairs-of-the-Indies-Barbarism-and-Political/Matsumori/p/book/9781032094724

この出版については静岡県立大学のホームページでも紹介いただきました。(松森奈津子准教授の単著 The School of Salamanca in the Affairs of the Indies のペーパーバック版が刊行 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学)